死をリスクにしたアメリカズカップで良いのか?


アメリカズカップ参加の各チームがレース用カタマランACCを進水させて(フランスはこれから)トレーニングを積み重ねています。
アルテミスの進水式の時にも、2013年にトレーニング中に死亡したクルー、Andrew Bart Simpsonさんのことについても触れたばかりの、セーリングにおける安全性について話題にしたいと思います。
先日オラクルが配信したトレーニング中にクルーの一人が海に落ちる動画について、イタリアのヨット専門誌「VELA」から、アメリカズカップのカタマランの使用に関わる安全性について、もう一度見直した方が良いのではないかという喚起を促す内容の記事を紹介します。

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「死をリスクにしたアメリカズカップに意味はあるのか?」
オラクルが配信した恐ろしい動画
グリンダーGraeme Spenceが、命を失う可能性があった無傷に終わったエピソード。

空飛ぶカタマランでスピードとエンターテイメント性を追求するのは良いが、サンフランシスコで死亡したAndrew Bart Simpsonの死は、アメリカズカップの運営者に何も意味がなかったのか?

オラクルが最近配信したMan Over Board(船外の男=海に落ちたクルー)の動画は、これまでの一連の事故の最新のエピソードであり、結果として悲劇にならなかっただけでも強烈なシーン。
今回の被害者は、オラクルのグリンダー Graeme Spence。
ビデオからは安定したフォイリングからジャイブする際に船体の前部分が余儀なく水面に突っ込むシーンを見ることができる。
Oracle ManOverboardを見る

Graeme Spenceは、片方のグリンダーからもう一方へ移動していたところ、おそらくフォイルの位置制御のエラーによりヨットが前のめりに水面に沈み込み、激しく減速した。
その瞬間Spenceは、船外に投げ出される。
カタマランの2体の船体の間に沈み込みような状態で、L字型に船体の内側に曲がっているフォイルの部分や、Tの字を反転させたような舵の部分に接触したら、このセーラーにいったいどのようなことが起こったのだろうと想像させられる映像だ。

アメリカズカップで使用されているカタマランの速度は時には壊滅的な力を持っている。
新しいレース形式になってから、フランスチームGroupamaのスキッパーFranck CammasもAC45Fでセーリング中に、今回よりも遅い速度でフォイルに接触して足を負傷したことも記憶に新しい事故の一つ。
40ノット以上の速度を記録するカタマランでは、シャープなドリフトは鋭いナイフに変わり、人間はナイフで切られるバターのような状態になる。

アメリカズカップは、海のF1レースのようなものという人もいるだろうが、深刻な事故は見逃すべきではない。
おそらく今回の場合は、命を落とすリスクの発生率が高すぎる最悪のエピソードの1つになる。
ここ数ヶ月のスピードテストだけでも、船外にセーラーが落ちる事件は発生しており、深刻な事故から運によって救われただけとも言える。

空力上の理由から、フロントデッキエリアは2つの船体の間にある空間に、実際に踏み込むスペースが確保されておらず、セーラーにとってはロシアンルーレットのように誰がいつ海に落ちてもおかしくないという危険性が常に存在する状態だ。

セーラーと船体を結びつける安全装置は解決策になり得るのか?
それを明言するのは難しい。
仮に船体が転覆した場合、セーラーにさらなる危険をもたらすことも考えられるからだ。
いずれにせよ、取り返しのつかない悲劇が起こる前に緊急に安全対策を見つける必要性があるのは明らかだ。

今回のGraeme Spenceの事故を受けて、オラクルのスキッパーJimmy Spithill は、流暢なコメントを残した。
「誰かが船体の前面部分で、海に落ちるのを見るたびに本当にひどい感覚に襲われる。振り返ってヨットの航跡上に「OK」を意味する親指が見えるのを待っている時間をとても長く思える」
レース開始前までに、セーラーの命をこのままにしておいて良いのか?
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悲劇が起こらないために。
過去の事故が忘れられるべきではないと思います。

それではまた!
Gironale della Vela 240217

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