165年の歴史を変える発表
1月25日に公式発表された将来のアメリカズカップに関する決定について、イタリアのスポーツ新聞「ガゼッタ・デロ・スポルト」でも詳しい記事が出たので、紹介します。
まずはこのリンクから写真を見てください。 News of America’s cup
この写真には、参加チーム全6チームのうち、5チームのチーム代表(アメリカ、イギリス、スエーデン、フランス、日本)がアメリカズカップを囲んだ写真です。 この写真に、ニュージーランドの代表が参加していないことが大きな皮肉になっているのです。
まず、1月25日にどのような発表がされたのか? 「ガゼッタ・デロ・スポルト」の記事は、「最古のトロフィーを巡って、ねじ曲げられた混乱」というタイトルがついています。 以下は、記事の要約です。
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この発表は、アメリカズカップのトロフィーを1851年に作成した、イギリスの宝飾品会社Garrard(ガラード)のロンドン本社から「意表をついた突然の」発表があった。
その内容とは、 ー今回の35回大会以降のアメリカズカップの開催時期を第36回は2019年、第37回は2021年に決定した。 ーその決定に、現在のアメリカズカップ参加チーム6チームのうち、5チームが合意し、規約に署名した。 ー開催時期の同意と同時に、予選ワールドシリーズのレースでは、ヨットクラスをAC45F、本戦ではACCを使用する。 ー重要なのは、この合意に、ニュージーランドが賛同していない。満場一致の合意ではない決定。
<盲点>
① 物議を醸し出す
この決定は、現時点ではあくまでも「こうなるかもしれない」という憶測レベルの決定に過ぎないということ。 ただし、この決定はアメリカズカップの伝統の視点から分析すると、アメリカズカップの伝統を払拭するという深刻な決定。 そもそも、アメリカズカップは、本戦で勝利したチームが次回の開催概要を決定する特権を持っているスポーツイベントであり、それが165年から続いている伝統でもある。 今回のように、将来のレース開催時期、ヨットクラスが勝者が決まる前に決められてしまうことは、歴史上無かったこと。 1988年大会を除いて、2007年までアメリカズカップは常にモノハルのヨットで競われてきており、2010年の大会は、開催規定の解釈を繰り返し行なった(ルール変更などで裁判沙汰になった大会)、モノハルからカタマランにヨットクラスを変えたことで、勝者でありレースの規定を決める特権を持つことが、当時の勝者であったオラクルにとって、いかにレースを有利に展開させることができるかということを印象付ける大会になった。 その流れは、2013年のサンフランシスコ大会に受け継がれ、今年、バミューダで見ることになるカタマランで競われるアメリカズカップのきっかけとなった。 更に、解釈を掘り下げると、今年、バミューダでイギリス、フランス、スェーデン、日本、またはアメリカチームがアメリカズカップを勝利すれば、次回とその次の大会のアメリカズカップは、カタマランの現在のクラスで行われることが確実にななるが。。。この決定に同意していないニュージーランドが今回勝利すれば??? 「すべてが見直される」可能性が高いということになる。
② なぜこの時期の決定か?
この決定のタイミングが今であることの背景には、数多くのスポンサー契約を継続して、スポンサーからイベントへの投資を続けてもらう状態を保つこと。という意味が大きく作用している。 確かに、大会ごとに、ゼロからスポンサー探しをしなくても良いということは、主催者にとって大きな要素になる。 日本円で90億円と言われるアメリカズカップの参加費用と、仮に新しいヨットクラスに決められた時のヨットの開発費用を考えれば、現在のヨットクラスで競い続けることは、大会の連続参加チームにとっては節約になり、開発時間を割く代わりに、レース回数を増やすことができることになるだろうという想定から、今回同意した5チームは、すばらしいアイデアとして受け入れた。 ただし、満場一致ではない決定なので、参加チームの間に、アメリカズカップについての考え方に、大きな亀裂があることは隠せない。
ニュージーランドは、第34回サンフランシスコ大会では、アメリカズカップ本戦の挑戦艇として勝ち残り、オラクルに対して8対9で敗戦したものの、オラクルを脅かした存在であること、これまでアメリカズカップの規定は「参加チームの満場一致」が条件で決められていたことも考慮すると、今回の決定を100%信頼できるものとは言い難い。 今年、バミューダでどのチームが勝つのか、それを見極めないと、まだ将来のことはわからないという可能性を含んでいる。
前述の通り、ニュージーランドが今年アメリカズカップを勝利すれば、次回の大会のフォーマットを自由に決めることができるということを意味する。 しかも、ニュージーランドが勝利するということは、大会の主導権が、南半球に移るということも意味する。 北半球とは季節が真逆になることで、今回発表された大会開催時期の予定も、大きなズレが発生することも予想る。 ヨットクラスについては、ニュージーランドはモノハルにアメリカズカップを戻そうとする意向があるという噂もあるので、ニュージーランドが勝利したら、何がどうなるのか今の時点ではわからないという結論になる。
まずはこのリンクから写真を見てください。 News of America’s cup
この写真には、参加チーム全6チームのうち、5チームのチーム代表(アメリカ、イギリス、スエーデン、フランス、日本)がアメリカズカップを囲んだ写真です。 この写真に、ニュージーランドの代表が参加していないことが大きな皮肉になっているのです。
まず、1月25日にどのような発表がされたのか? 「ガゼッタ・デロ・スポルト」の記事は、「最古のトロフィーを巡って、ねじ曲げられた混乱」というタイトルがついています。 以下は、記事の要約です。
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この発表は、アメリカズカップのトロフィーを1851年に作成した、イギリスの宝飾品会社Garrard(ガラード)のロンドン本社から「意表をついた突然の」発表があった。
その内容とは、 ー今回の35回大会以降のアメリカズカップの開催時期を第36回は2019年、第37回は2021年に決定した。 ーその決定に、現在のアメリカズカップ参加チーム6チームのうち、5チームが合意し、規約に署名した。 ー開催時期の同意と同時に、予選ワールドシリーズのレースでは、ヨットクラスをAC45F、本戦ではACCを使用する。 ー重要なのは、この合意に、ニュージーランドが賛同していない。満場一致の合意ではない決定。
<盲点>
① 物議を醸し出す
この決定は、現時点ではあくまでも「こうなるかもしれない」という憶測レベルの決定に過ぎないということ。 ただし、この決定はアメリカズカップの伝統の視点から分析すると、アメリカズカップの伝統を払拭するという深刻な決定。 そもそも、アメリカズカップは、本戦で勝利したチームが次回の開催概要を決定する特権を持っているスポーツイベントであり、それが165年から続いている伝統でもある。 今回のように、将来のレース開催時期、ヨットクラスが勝者が決まる前に決められてしまうことは、歴史上無かったこと。 1988年大会を除いて、2007年までアメリカズカップは常にモノハルのヨットで競われてきており、2010年の大会は、開催規定の解釈を繰り返し行なった(ルール変更などで裁判沙汰になった大会)、モノハルからカタマランにヨットクラスを変えたことで、勝者でありレースの規定を決める特権を持つことが、当時の勝者であったオラクルにとって、いかにレースを有利に展開させることができるかということを印象付ける大会になった。 その流れは、2013年のサンフランシスコ大会に受け継がれ、今年、バミューダで見ることになるカタマランで競われるアメリカズカップのきっかけとなった。 更に、解釈を掘り下げると、今年、バミューダでイギリス、フランス、スェーデン、日本、またはアメリカチームがアメリカズカップを勝利すれば、次回とその次の大会のアメリカズカップは、カタマランの現在のクラスで行われることが確実にななるが。。。この決定に同意していないニュージーランドが今回勝利すれば??? 「すべてが見直される」可能性が高いということになる。
② なぜこの時期の決定か?
この決定のタイミングが今であることの背景には、数多くのスポンサー契約を継続して、スポンサーからイベントへの投資を続けてもらう状態を保つこと。という意味が大きく作用している。 確かに、大会ごとに、ゼロからスポンサー探しをしなくても良いということは、主催者にとって大きな要素になる。 日本円で90億円と言われるアメリカズカップの参加費用と、仮に新しいヨットクラスに決められた時のヨットの開発費用を考えれば、現在のヨットクラスで競い続けることは、大会の連続参加チームにとっては節約になり、開発時間を割く代わりに、レース回数を増やすことができることになるだろうという想定から、今回同意した5チームは、すばらしいアイデアとして受け入れた。 ただし、満場一致ではない決定なので、参加チームの間に、アメリカズカップについての考え方に、大きな亀裂があることは隠せない。
ニュージーランドは、第34回サンフランシスコ大会では、アメリカズカップ本戦の挑戦艇として勝ち残り、オラクルに対して8対9で敗戦したものの、オラクルを脅かした存在であること、これまでアメリカズカップの規定は「参加チームの満場一致」が条件で決められていたことも考慮すると、今回の決定を100%信頼できるものとは言い難い。 今年、バミューダでどのチームが勝つのか、それを見極めないと、まだ将来のことはわからないという可能性を含んでいる。
前述の通り、ニュージーランドが今年アメリカズカップを勝利すれば、次回の大会のフォーマットを自由に決めることができるということを意味する。 しかも、ニュージーランドが勝利するということは、大会の主導権が、南半球に移るということも意味する。 北半球とは季節が真逆になることで、今回発表された大会開催時期の予定も、大きなズレが発生することも予想る。 ヨットクラスについては、ニュージーランドはモノハルにアメリカズカップを戻そうとする意向があるという噂もあるので、ニュージーランドが勝利したら、何がどうなるのか今の時点ではわからないという結論になる。
ニュージーランドは、第34回サンフランシスコ大会では、アメリカズカップ本戦の挑戦艇として勝ち残り、オラクルに対して8対9で敗戦したものの、オラクルを脅かした存在であること、これまでアメリカズカップの規定は「参加チームの満場一致」が条件で決められていたことも考慮すると、今回の決定を100%信頼できるものとは言い難い。
今年、バミューダでどのチームが勝つのか、それを見極めないと、まだ将来のことはわからないという可能性を含んでいる。
前述の通り、ニュージーランドが今年アメリカズカップを勝利すれば、次回の大会のフォーマットを自由に決めることができるということを意味する。 しかも、ニュージーランドが勝利するということは、大会の主導権が、南半球に移るということも意味する。 北半球とは季節が真逆になることで、今回発表された大会開催時期の予定も、大きなズレが発生することも予想る。 ヨットクラスについては、ニュージーランドはモノハルにアメリカズカップを戻そうとする意向があるという噂もあるので、ニュージーランドが勝利したら、何がどうなるのか今の時点ではわからないという結論になる。
③ スポーツイベントとしてのもろさ
結局、満場一致の決定ではないという事実は、満場一致を得ないでも公表を強行した主催者側の横暴さを垣間見えるものの、同時にイベントしての基盤の弱さを隠すための発表とも解釈できる。 アメリカズカップは、これまでも過去に裁判沙汰になったりなど、混乱が伴うスポーツイベントとしても有名で、今回のような矛盾を伴う発表は、史上初とは言えないものの、大会の主導権を握るオラクルがアメリカズカップの伝統を払拭しようとしている行為としているように見える。 現行の大会が終わるまで、将来の大会を計画することは無かったことから、将来に向けてイベントしての存続に焦りを感じさせる決定とも考えられる。 この焦り、もろさの背景には、アメリカズカップの将来を信じるようにというスポンサーへ向けたメッセージをアピールするための決定を急ぎ、スポンサーを説得するために他に手段がないから。という解釈ができる。 「アメリカズカップは、大会の大義を変更しないで、これからも続けますから、投資を続けてください」というアピール。
イタリアのルナロッサのオーナー、Patrizio Bertelli (パトリッツィオ・ベルテッリ)は、今年の第35回アメリカズカップの参加を2015年のワールドシリーズが始まる直前に、参加費の40億円を投資しながらも参加を辞退した。アメリカズカップへの扉を乱暴に閉ざした原因は、まさにオラクルの規定変更の行為で、「オラクルを信用できない」と言いった。 今回の唐突で新たな発表は、Patrizio Bertelli が「だからオラクルは信用できないと言った」と今ごろあざ笑っているように思わせる事件だ。 ある種の満足は、お金じゃ買えないものだ。
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今回イタリアからは参加チームがいませんが、今回のニュースに対する厳しい批判と、軽率なルール変更への危惧を感じさせる記事です。 一瞬、過半数が賛成なら、それでもいいじゃないと思わせる話かもしれませんが、 この決定には165年間の伝統や習慣、それぞれのアメリカズカップを尊重する思いが複雑に絡んでいるような気がします。 ただ単に、ビジネス化をすればいいということではなく、それでは今までの歴史や伝統はどうなんだと問い正す意思表示をするニュージーランドの立場も考えさせられます。
それではまた!
Gazzetta dello Sporto 25/1/2017
前述の通り、ニュージーランドが今年アメリカズカップを勝利すれば、次回の大会のフォーマットを自由に決めることができるということを意味する。 しかも、ニュージーランドが勝利するということは、大会の主導権が、南半球に移るということも意味する。 北半球とは季節が真逆になることで、今回発表された大会開催時期の予定も、大きなズレが発生することも予想る。 ヨットクラスについては、ニュージーランドはモノハルにアメリカズカップを戻そうとする意向があるという噂もあるので、ニュージーランドが勝利したら、何がどうなるのか今の時点ではわからないという結論になる。
③ スポーツイベントとしてのもろさ
結局、満場一致の決定ではないという事実は、満場一致を得ないでも公表を強行した主催者側の横暴さを垣間見えるものの、同時にイベントしての基盤の弱さを隠すための発表とも解釈できる。 アメリカズカップは、これまでも過去に裁判沙汰になったりなど、混乱が伴うスポーツイベントとしても有名で、今回のような矛盾を伴う発表は、史上初とは言えないものの、大会の主導権を握るオラクルがアメリカズカップの伝統を払拭しようとしている行為としているように見える。 現行の大会が終わるまで、将来の大会を計画することは無かったことから、将来に向けてイベントしての存続に焦りを感じさせる決定とも考えられる。 この焦り、もろさの背景には、アメリカズカップの将来を信じるようにというスポンサーへ向けたメッセージをアピールするための決定を急ぎ、スポンサーを説得するために他に手段がないから。という解釈ができる。 「アメリカズカップは、大会の大義を変更しないで、これからも続けますから、投資を続けてください」というアピール。
イタリアのルナロッサのオーナー、Patrizio Bertelli (パトリッツィオ・ベルテッリ)は、今年の第35回アメリカズカップの参加を2015年のワールドシリーズが始まる直前に、参加費の40億円を投資しながらも参加を辞退した。アメリカズカップへの扉を乱暴に閉ざした原因は、まさにオラクルの規定変更の行為で、「オラクルを信用できない」と言いった。 今回の唐突で新たな発表は、Patrizio Bertelli が「だからオラクルは信用できないと言った」と今ごろあざ笑っているように思わせる事件だ。 ある種の満足は、お金じゃ買えないものだ。
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今回イタリアからは参加チームがいませんが、今回のニュースに対する厳しい批判と、軽率なルール変更への危惧を感じさせる記事です。 一瞬、過半数が賛成なら、それでもいいじゃないと思わせる話かもしれませんが、 この決定には165年間の伝統や習慣、それぞれのアメリカズカップを尊重する思いが複雑に絡んでいるような気がします。 ただ単に、ビジネス化をすればいいということではなく、それでは今までの歴史や伝統はどうなんだと問い正す意思表示をするニュージーランドの立場も考えさせられます。
それではまた!
Gazzetta dello Sporto 25/1/2017
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